一般不妊（当院）

　月経時期に超音波検査をすると、卵巣の表面に数ミリの黒丸が見えます。これが卵胞です。大きさと数を観察した後、ホルモン値と照らし合わせながら、考えられる事を診察室で説明します。卵胞は脳からのホルモン作用により発育し、通常は複数の卵胞の中からひとつが選ばれ、やがて排卵しますが、無排卵の場合もあります。

　卵胞発育にともない頸管粘液が増えてきます。子宮内膜も厚くなってきますが、個人差があります。頸管粘液が少なめの方、子宮内膜があまり厚くならない方もいます。超音波検査、ホルモン検査、フーナー検査を行い、これらを観察します。

39歳の方。月経周期は30日、クロミッド・タイミング法を行っていましたが妊娠に至らず。頸管粘液の減少を自覚し、自然周期を希望したのですが対応が難しいとのことで、当院へ転院されて来られました。フーナー検査は未実施でした。初回周期、当院では自然周期でのタイミング法を選択。月経11日目、卵胞は右に16ミリ、他は小さい。2日後、卵胞は右に19ミリ、フーナー検査を行うと頸管粘液は通常量、サラサラして直進する精子もみられ良好でした。その周期に自然妊娠されました。無事卒業しました。フーナー検査は簡便な検査ですが、あまり実施されない施設も多いのかなという印象です。頸管粘液が不良な症例に限らず、顕微鏡の映像を通して精子の状態も分かり、この簡便な検査から得る情報はとても多いと思っています。デリケートな状況について、患者様と情報の共有も可能となります。当院では丁寧に、かつ厳しめに、繰り返し行っています。（2023年8月）

30歳の方。月経周期は30〜35日、不妊期間は約2年。クロミッド・タイミング法を3周期行うも妊娠に至らず、当院へ転院されて来られました。フーナー検査、精液検査は未実施でした。クロミッドを内服した状況で初診されました。初回周期の月経15日目（排卵前日）、卵胞は右に22ミリ、16ミリ、内膜6.5ミリ、フーナー検査で頸管粘液は極めて少なく、精子を認めませんでした。妊娠に至らず。精液検査を行いましたが、正常でした。2周期目、クロミッドから自然周期に変更しました。ゆっくり発育し月経20日目に排卵、内膜9ミリでした。その周期に自然妊娠され、無事卒業しました。フーナー検査の結果は周期毎に異なる場合もあり、治療方針を決める際の有用な情報が得られると思っており、当院ではできるだけ行っています。クロミッド内服後に頸管粘液が減ったり、子宮内膜が薄くなる場合がありますので、要注意です。（2023年9月）

32歳の方。月経周期は29〜34日、不妊期間は約1年。他院でクロミッド・タイミング法を3周期行うも妊娠に至らず、漢方薬局からの紹介で当院へ転院。フーナー検査、精液検査は未実施でした。前周期に処方されたクロミッドを内服した後に、当院を初診されました。初回周期の月経14日目（排卵前日）、卵胞は左に24ミリ、内膜7ミリ、フーナー検査で頸管粘液は極少量、粘性、精子を認めませんでした。妊娠に至らず。2周期目、クロミッドから自然周期に変更しました。ゆっくり発育し月経17日目、卵胞は右に小10個、左20ミリ、内膜7ミリ、頸管粘液は少ないが粘性はなく、フーナー検査で精子を認めるも、各々の視野により運動精子のバラつきがあり、合格には足りない程度。ホルモン値を参考に、翌日のタイミングを指導。2日後（月経19日目）が排卵当日でしたが、頸管粘液は少ないながらも2日前より量が増え、直進する精子も増えました。内膜8ミリでした。その周期に自然妊娠され、無事卒業しました。自然周期でも頸管粘液が増えない方もいます。（2023年10月）

31歳の方。月経周期は34〜46日。前医でタイミング法を6周期行うも、排卵が遅い、排卵日がよく分からないと。初回周期、自然周期の月経19日目、卵胞は右に11ミリ、左に9ミリ、他は小さい。E2値は60台、ゆっくり発育中。5日後の月経24日目、卵胞は右に19ミリ、フーナー検査を行うと頸管粘液はサラサラしており、直進する精子が多数、良好でした。E2値は200を超え、LHが上昇し翌日が排卵日でしたので、その日もタイミングをとっていただく。幸い、その周期に妊娠されました。無事卒業しました。20代後半、30代前半の方の排卵は、少々遅いものです。今回の排卵日は月経25日目でした。（2023年11月）

・E2（女性ホルモン）は卵胞発育にともない上昇するホルモンです。当院では、主に月経時期、発育時期に検査します。卵巣の状況により高温期に検査する方もいます。

32歳の方。月経周期は33〜36日。当院でタイミング法を5周期行うも妊娠に至らず。フーナー検査は毎回良好でしたので、タイミング法を継続。6周期目の月経15日目、卵胞は右に10ミリ、7ミリ、左7ミリ、他は小さい。10日間が経過。月経25日目、卵胞は左に18ミリ、E2値も200台に上昇。右卵胞は縮小。月経25、26日目にタイミングをとっていただく。いつもより遅い排卵でしたが、その周期に妊娠されました。無事卒業しました。途中から育った左卵胞の中に良い卵子がいました。今回の排卵日は月経27日目でした。（2024年2月）

30代後半の方。月経周期は不安定（2〜3ヶ月周期、たまに30日前半）。月経14日目、卵胞は5〜6ミリ大、発育が遅れている。月経26日目、右の卵胞が18ミリに発育、E2値は300台、LHが70台に上昇。フーナー検査不良のため、翌日に人工授精（初回）を行う。幸い妊娠され、無事卒業しました。今回の排卵日は月経27日目でした。（2024年3月）

33歳の方。月経周期は34〜35日。前医に半年間通院、その後、通院を止めて、自己タイミングを半年間行うも妊娠に至らないため、当院を受診されました。初回周期の通水検査で子宮内に凸部を認め、当院で切除（病理組織は子宮内膜ポリープ）。翌周期、自然周期で卵胞の発育を観察。月経17日目、卵胞は右に7ミリ、6ミリ、左は5ミリが数個と、まだ小さい。月経23日目、右に11ミリ、すこし伸びる。月経26日目のタイミングを指示。月経27日目、右が20ミリに発育、E2値も200台に上昇、LHも100台に上昇。当日もタイミングをとっていただく。いつもより遅い排卵のようでしたが、その周期に妊娠されました。無事卒業しました。今回の排卵日は月経28日目でした。（2024年4月）